関節リウマチの治療法や治療薬の開発により、関節リウマチの治療目標は「痛みの緩和」から、
「寛解の状態へ導く」という考えに変化してきました。

「寛解」
(かんかい)とは、関節リウマチの症状が無くなった状態のことです。

関節リウマチにおける寛解には3つあり、

① 臨床的寛解 関節の痛みや腫れがなくなり、検査値異常もない
② 構造的寛解 関節破壊の進行がない
③ 機能的寛解 身体機能の障害が進行しない

この「寛解」状態に導くことができれば、抗リウマチ薬を服用しながら、
支障のない日常生活を送ることができるようになります。
 
 
 関節リウマチの治療法は、薬物療法、手術療法、リハビリテーションなどが挙げられますが、
まずは薬物療法となります。近年、治療薬が続々と発売されており、早期発見・早期治療をすれば
症状が改善あるいは「寛解」状態に持ち込める患者さんが増える傾向にあります。

 関節リウマチに用いられる薬は、消炎鎮痛薬、抗リウマチ薬、ステロイド、生物学的製剤などの内服薬と注射薬があります。
 
 これまで主に使用されてきた抗チウマチ薬は、免疫の異常を修復することで、症状を改善する働きがありました。しかし、これだけでは、多くの患者さんで十分に病気の進行を止めることができませんでした。

 そこで効果の優れた薬、免疫を抑制することができるメトトレキサートが1999年に発売されました。
 病状によって選択の余地があるものの、原則としてまずは使用されるべき薬はメトトレキサートです。
 当初は1週間に使用できる薬剤量が1週間に8mgまでと日本国内では上限がありましたが、
 2010年冬にリウマチ学会の主導で上限が1週間に16mgまでと、今までの倍量投与が可能となっています。

 内服薬、特にメトトレキサートを充分量投与しても病気の勢いを抑えられなければ、レミケード®、エンブレル®、アクテムラ®、ヒュミラ®、オレンシア®、シンポニー®、シムジア®などの生物学的製剤を検討します。
 生物学的製剤はとても有効な薬ですが、とても高価なため、抗リウマチ薬を併用する治療法も存在します。
 



生物学的製剤は、作用機序によって3つに大きく分られます。


 TNFという関節リウマチ患者さんの関節で免疫の異常を起こしている物質の働きを阻止し効果を
発揮する薬です。TNFが作用しないように、TNFがくっつく場所をブロックするタイプ(受容体製剤)と、TNFが作用する前に捕まえてその作用をブロックするタイプ(抗体製剤)の2種類があります。

TNF阻害薬は世界的に多くのデータが出ているので、生物学的製剤の基準薬となっています。

レミケード

点滴するタイプで、初回と2週後、6週後の治療が終わったら、8週間おきに点滴します。
点滴のため数日間の入院をすることもありますが、基本は外来での点滴です。

エンブレル

皮下注射するタイプで、効果の持続時間がとても短いため、週に2回の注射を続けます。
原則として週2回病院に通うことになりますが、自宅でご自身が薬を調整して注射する方法
(自己注射)を選ぶこともできます。
 ヒュミラ

皮下注射するタイプで、効果の持続時間が長いため、2週間に1回の注射で治療が行えます。
通院で注射することもできますし、自己注射をすることもできます。

シンポニー

 <メトトレキサートを併用する場合>
通常、成人には50mgを4週に1回、皮下注射する。
なお、患者の状態に応じて1回100mgを使用することができる。

 <メトトレキサートを併用しない場合>
通常、成人には100mgを4週に1回、皮下注射する。

シムジア

 1回400mgを初回、2週後、4週後に皮下注射し、以後1回200mgを2週間の間隔で皮下注射します。
なお、症状安定後には、1回400 mgを4週間の間隔で皮下注射することもできます。
 また、医師により適用が妥当と判断された場合には、自己注射による投与も可能です。



アクテムラ 
 
 最近の研究では関節リウマチ患者さんの関節では、IL-6という物質も関係することが明らかになってきました。IL-6受容体に対する抗体製剤は、その物質の働きを止める薬です。
 アクテムラは点滴注射するタイプで、月に1回点滴します。点滴に数日間の入院をする場合がありますが、外来で点滴することも可能です。




オレンシア
 免疫があやまって自分の身体を攻撃しないよう、免疫を司るT細胞の働きを抑え効果を発揮する
新しいタイプの薬です。点滴注射するタイプで初回、2週間後、4週間後の治療が終わったら、4週間おきに点滴します。
点滴に数日間の入院をする場合もありますが、外来で点滴することも可能です。


表にまとめると、表のようになります。

 
 
 
 
 
 
 
 商品名  レミケード  エンブレル  ヒュミラ  アクテムラ  オレンシア  シンポニ  シムジア
 一般名  インフリキシマブ  エタネルセプト  アダリムマブ  トシリズマブ  アバタセプト  ゴリムマブ  セルトリズマブ
 作用機序  TNFα  TNFα  TNFα  IL-6  T 細胞刺激調節  TNFα  TNFα
 投与方法①  点滴静注  皮下注射  皮下注射  点滴静注  点滴静注  皮下注射  皮下注射
 投与方法②  0,2,6,その後8週毎  自己注射可  自己注射可  4週に1回  0,2,4,その後4週毎  4週に1回  自己注射可
 MTX併 用  必須  単独可  単独可  単独可  単独可  単独可  単独可
 バイオフリー  あり    あり        
 
 点滴時間は30分から2時間程です。
 当院ナースが付き添いますのでご安心下さい
    自己注射のできる注射剤があります。
 患者さん自身のライフスタイルにあわせて治療が出来ます。
 
 
 
 
 
 
 質問

 生物学的製剤による治療は、症状が取れても続けなければならないのでしょうか?


回答

 生物学的製剤の中には、発症2年以内の早期から使用を開始して薬がよく効いた方は、1年程度の治療の後に、
治療を中止しても寛解状態が維持できたという報告があります。

 しかし、発症してから長時間が経過してしまった方では、治療を途中でやめると症状が
悪化する場合が多くみられ、原則として治療を続けた方がよいと考えられます。
 
 
     
質問

 生物学的製剤の効果が良ければ、消炎鎮痛剤、ステロイド薬や抗リウマチ薬などの内服薬は中止できますか?

回答

 中止できます。特に、消炎鎮痛剤は減量したりあるいは中止できる患者さんが多くいます。
また、ステロイド薬も減量できます。様子をみながら徐々に減らしていき、いずれ中止できることがあります。
また、生物学的製剤は抗リウマチ薬、特にメトトレキサートと併用した場合に最も良い効果が得られるので、
他の薬の服用をすべて止めてしまったとしても、抗リウマチ薬と生物学的製剤による治療は継続したほうが良いでしょう。
 アクテムラ®に関しては、他の抗リウマチ薬と併用をしなくとも十分な効果が期待できるので、
この場合もステロイド薬と同様に様子を見ながら抗リウマチ薬の減量・中止が可能となります。
 
.
 
 
 
↑このページのトップへ

  関節リウマチによる機能障害は,炎症によって関節が破壊されてしまうためにおこります.
 関節の破壊は発症後早期に急速に進行してしまいます.
 このため,関節リウマチの治療はできるだけ早く始めて,関節の破壊が進まないようにすることが大切です。

バナー画像