2005年9月29日(木) |
難治性骨折に対する超音波骨折治療器の紹介。 |
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サッカーのイングランド代表、ベッカム選手が2002年日韓ワールドカップ直前、脛骨疲労骨折治療に対して治癒促進のために用いたことで脚光を浴びた治療器です。
その名は、セーフス(SAFHS)で、「超音波によって骨折治癒を促進するシステム」と言う意味であるSonic Accelerated Fracture Healing Systemの略です。
日本国内では、(株)帝人が取り扱っています。
概 念
1994年と1997年に米国において脛骨遠位部と橈骨遠位端新鮮骨折に対する,多施設による無作為二重盲検プラセボ比較臨床試験が行われ,超音波療法によりそれらの骨折治癒期間が短縮したことが示されています。
文 献
1.脛骨骨幹部新鮮骨折ー皮下およびGustiloI型開放骨折67例ー(セーフス33例、対照群34例) ニ重盲検臨床試験において、セーフスは対照群に対して、骨癒合までに要する日数を38%短縮が可能であり、アメリカにおいて遷延癒合骨折とみなされる症例は、対照群(35%)と比較して約1/6(6%)でした。
Heckman,J.D.et al.1994
2.橈骨遠位端新鮮骨折61例(セーフス30例、対照群31例) ニ重盲検臨床試験において、セーフスは対照群に対して、骨癒合までに要する日数を38%短縮が可能でした。
kristiansen,T.k.et al. 1997
わが国では1998年に厚生省の認可を受け,主に長管骨の遷延治癒骨折と偽関節の治療に使用されています。
特徴と効果
現在骨折治療に用いられている超音波のエネルギー密度は30mW/cm2であり,温熱療法に使われてきた超音波のエネルギー密度500~3,000mW/cm2に比べて非常に低出力です。超音波の骨折部における効果は細胞レベルにおける機械的刺激によって骨芽細胞や軟骨細胞の産生を促進する効果があるものではないかと考えられています。
したがって,骨折治癒過程においても仮骨の大きさの変化は起こらず,骨化が促進され仮骨の癒合が早まることが主な効果になります。
すなわち,X線写真における変化は,骨折部における骨梁の連続性が早く観察されるようになります。
骨折後早い時期から超音波を照射することが有用で,新鮮骨折の治癒促進効果が最も期待できます。
治療の実際
(1)適 応
現在のところ適応は日本国内では主に長管骨の偽関節および遷延治癒骨折に限られています。
偽関節および遷延治癒骨折とは、予測された期間内(一般に受傷後3ヶ月)を超えた骨癒合(骨折部位の修復)が得られない骨折の総称です。
(2)照射条件
専用器械を用いて,超音波を骨折部に1日20分間照射します。
(3)期 間
骨折部位や状態によって異なりますが,単純X線写真にて効果が現れるまでに少なくとも2~3カ月かかります。治療期間としては6~12カ月程度が多く、6カ月間使用して効果がみられない場合は他の方法を考慮したほうがよいと思われます。
(4)外固定との併用
内固定がない場合,あっても骨折部の不安定性を残している場合では,ギプス固定や装具による外固定が,とくに治療初期には必要です。
(5)適応骨折部位
原則、鎖骨、上腕骨、前腕骨、中手骨、大腿骨、下腿骨、中足骨です。
(6)料金
125,000円です。健康保険が適用されますので、1割負担で12,500円、3割負担で37,500円です。
治療に要した日数、回数にかかわらず1回だけ負担することとなります。
(7)日本国内の治療成積
2005年8月末までに、約4万例が登録されており、治療成功率は90%前後です。
一般に、血流の悪い部位の骨折、粉砕した骨折、開放骨折などは適切な手術を行っても、骨癒合が遅れる確率が高いものです。このような症例には超音波骨折治療器は良い適応と思います。
詳しくは主治医とご相談下さい。
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